2 Day after Christmas
気付けば僕はイルミネーションの前にいた。
別にここに来たいと思っていたわけでもないし、特にイルミネーションをみたかったわけでもない。ふと、気づいた時に、目の前にイルミネーションがあった、というだけだ。
時間は午後14時を回った頃、仕事の合間に気分転換に外の空気を吸おうと、ただ歩いていた。
輝きを灯す無数の球体達は、今はその明るさを控えて、来るべき時に備えてずっと身を潜めているように見える。その姿は草食動物を狙うタイミングを草陰からじっと伺っている獰猛な動物のようにも見えるし、獰猛な動物から襲われないように、じっと動きを止めている小動物にも見える。
いや、そんな風には見ないか
ただ目の前にあるイルミネーション達は心なしか安堵の表情を浮かべているように見える。
いや、そんな風に見えるわけないか
一大イベントを終え、ほっと一息をついているのだろう。
イルミネーションがイルミネーションたるべく働きを始める前に、僕は自分自身の仕事を始めるために、帰路につく。光り輝く物を見るのは、何も今日じゃなくたっていい。見たい時に見ればいいし、見たくなければ見なくてもいい。今となってはもうどうでもいい。
僕はやれる事をしたつもりだ。
『ベストを尽くした』という言葉がふさわしいように思う。
今年も僕は戦った。
そこには初めから勝ち負けなんてなかったのかもしれない。勝ち負けにこだわっていたのは自分だけだったのかもしれない。自分はいったい誰と戦っていたのか?
何を持って『勝ち』というのか。
何を持って『負け』なのか。
過ぎた今となっては確かな事は確かめようもない。過ぎた日々は2度と過ごせない。過去を振り返ることなど、生産性のない無駄な時間かもしれない。
が、今の僕はどうしてももう一度、あの日の事を改めて思い出してみようと思っている。あのイルミネーションのように無数に絡まった記憶の糸から、ちらほら思い出の明りがつき始める。
【The Day is Christmas 】に続く