八百万の神様、いつもお疲れ様です。
先に言っておくが、私は無神教だ。
特に贔屓している神様はいない。
しかし、
もう自分ではどうにもならない時
そんな時に
祈る事がある。
実に、都合が良い。
が、
何かにすがらなければならない時もある。
ドラマでしか見たことがないような展開
そんなドラマが不意に自分に訪れた時、
まず驚き、焦り、ビビり、そして、祈る。
「〇〇さん、診察実にお入りください」
「はい、失礼します。」
「えっとですね。血液検査は問題なかったんですが、このレントゲン写真ちょっと見てもらえますか?」
「は、はい」
「ここにですね。気になる影がありますね。今日お時間大丈夫ですか?今日のうちに精密検査しておきましょう」
「え?は、はい」
「じゃあこのカルテを持って、CTスキャンを受けて来てください。」
「は、はい」
言われるがまま、なされるがまま。
何がなんだかわからない。
今の状況がうまく整理できてない。
思考の停止。
ん?なに?
肺に気になる影?
精密検査?
.....
これってちょっとこわくね?
軽い気持ちで病院にきた。
咳が続くから薬をもらおうと。
一応大きな病院に行こうと。
そしたら、これだ。
【CTスキャン】
初アハンだ。
なんだあの恐ろしい機械は。
吸い込まれていく時のあの恐怖感、たまったもんじゃない。横になり、固定され、腕を上げて、息を吸い、息を止め、体をスキャンされ、息を吐く。そして、また息を吸い、息を止め、体をスキャンされる。
めちゃくちゃこわい。
「はい、もうおっけいです。ありがとうございます。」
「あ、ありがとうございます」
ジッと先生の目を見る
もうこの瞬間に、先生は気づいているのだろうか。
何かを知っているのだろうか。
あーその笑顔が逆にこわい。
知りたいけど、知りたくない。
この待っている時間が地獄。
携帯の履歴が
『肺がん』『肺炎』『結核』
と、どんどん病気名で埋まっていく。
「なに?ガンで最も多いのが肺がんだと?」
なんて恐ろしい事実を....
いや、弱気になるな。無理にでも強がれ。
あ、でもこわい。やっぱりなんかこわい。
どうか、神様、お願いします。
こんな時だけ頼って申し訳ございません。
僕、まだ生きたいです。
こわいこわいこわい。
めっちゃこわい。
「〇〇さん、診察に室にお入りください」
遂にきた。
びびるな。気合いを入れろ。
「失礼します」
「はい、じゃあそこにおかけください」
「はい」
先生の机の上の画面には、俺の肺の写真が写っている。が、素人にはさっぱり読み取れない。そりゃそうだ。
「えっと、まあ心配するほどのない軽い肺炎ですね。さっきの影は骨とかが重なって写った影でしょう、じゃあ抗生剤出しますんで、安静にしてくださいね。」
「は、はい」
体の力がいっきに抜ける。
「....良かった。」
心からつぶやく。
超絶ビビった。
が、
とっても『生きとる感』を感じた日だった。
あー健康な体があるだけで儲けもんなんだ
と
心から思った。
同時に、
自分もいつ病気になったりしてもおかしくないんだなと強く『死』を感じた日でもあった。
時間は有限。
やれるうちにやりたい事を。
遠慮したら負け。
甘られるうちに甘えられるだけ甘い蜜を吸おう。
後日、神社に行った。
お参りをする。
私は無神教だ。
特に贔屓している神様はいない。
それでもしっかりと挨拶はしよう。
八百万の神様、いつもお疲れ様です。
時間を大切にしよう。一日一日。
そう胸に刻む。
これは人ごとではない。
強く清く潔く、生きて行こう。
そして、
翌る日の朝、俺はとりあえずパソコンの電源をつける。
いつの間にか見ている。
そう、ルーティンワークだ。
どんなに決意しても、
人の意思は儚くももろい。
いや、別に悪い事をしているわけじゃない。
むしろ、健全。
そう言い聞かせる。
“この瞬間を”大事にだ。
Feel so good, really really good
来たる怠惰感。
全てを悟ったようなこの感覚。まるで賢者にもなったかのようだ。
そして、寝る。
そう、ルーティンワークだ。
眼が覚める
デジタルの時計は17:23分を表示している。
Oh really?
びっくり仰天。
“作戦は時間を大事に”にだったのに。
まあよい。要は考え方。
寝る事も大事だ。
明日から頑張ろう。
と、言い聞かせる。
が、ふと思う
頑張る明日っていつ来るんだろう。
今日も平和な一日だ。
まるで全てを悟ったかのような感覚
完全に賢者モードだ
「コホッコホッ」
いつ来るんだろう。
いつかは来る。
きっと来る。
そう
いつか必ず。